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2026/6/27

属人化を解消する方法|原因・リスク・AI活用の対策を解説

属人化を解消する方法を原因・リスクから具体的な対策まで解説。暗黙知のデジタル化やAI活用による業務標準化の手順、ナレッジ継承の進め方を、最新の調査データとともに紹介します。

「あの人がいないと回らない」——この言葉に心当たりがあるなら、それは属人化のサインです。

帝国データバンクが2026年1月に実施した「人手不足に対する企業の動向調査」では、企業の52.3%が正社員の不足を感じており、4年連続で半数を超えています。人手不足が常態化する中、特定の担当者に業務が集中する属人化のリスクはかつてないほど高まっています。

一方で、2025年版の中小企業白書は、業務の属人化・ブラックボックス化の防止に取り組んでいる事業者ほど付加価値額が増加している傾向を示しています。属人化の解消は、単なるリスク回避ではなく、企業の成長につながる経営課題です。

この記事では、属人化が発生する原因とリスクを整理した上で、従来の対策からAIを活用した最新の手法まで、具体的な解消方法を解説します。

属人化とは何か

属人化とは、業務の進め方や判断基準が特定の担当者の経験・スキルに依存し、その人以外では対応できない状態を指します。対義語は「標準化」であり、誰が担当しても同じ品質で業務を遂行できる状態が理想です。

属人化と似た言葉に「ブラックボックス化」があります。属人化が進行すると、その業務の実態が周囲から見えなくなり、ブラックボックス化へと発展します。どちらも業務の持続性を脅かすものですが、属人化はブラックボックス化の前段階と捉えるとわかりやすいでしょう。

なお、属人化は必ずしもネガティブな側面だけではありません。高度な専門性を持つスペシャリストの存在は、企業の競争力の源泉にもなります。問題なのは、その専門性やノウハウが「共有されていない」ことです。個人の強みを活かしつつ、知識を組織に蓄積する仕組みが、属人化解消の本質です。

属人化が起きる5つの原因

属人化は個人の怠慢ではなく、組織の構造的な問題として生じます。主な原因は5つあります。

1. 人材不足による業務集中

最も多く挙げられる原因です。株式会社SMBが2025年1月に実施した「人材不足と業務の属人化」に関する調査では、建設業・製造業の管理職の約8割が人材不足を感じており、属人化の原因として「人材不足」が第1位に挙がっています。「この人に任せたほうが早い」という判断の積み重ねが、特定の担当者への業務集中を引き起こします。

2. マニュアル整備の不足

業務手順や判断基準が文書化されないまま、OJTや口頭での引き継ぎに頼ることで、暗黙知が特定の人に蓄積されます。厚生労働省「令和6年度 能力開発基本調査」によると、能力開発の問題点として「指導する人材が不足している」を挙げた事業所が59.5%、「人材育成を行う時間がない」が47.4%に達しており、教育や文書化に割くリソースそのものが不足しています。

3. 評価制度の影響

「自分にしかできない仕事がある」ことが社内での存在価値につながるという意識が、意図的な属人化を助長するケースがあります。ナレッジ共有を評価する仕組みがなければ、個人にとっては知識を囲い込むほうが合理的な選択になります。

4. 業務の専門性と複雑性

法務、経理、IT、製造工程における熟練技術など、高度な専門知識を要する業務は、そもそも担当できる人が限られます。この場合、属人化は避けにくい構造にあるため、「人を増やす」よりも「知識を共有する仕組みを作る」アプローチが必要です。

5. 環境変化への追随不足

法改正、技術トレンドの変化、市場環境の変化などに対応する過程で、最新の情報や対応方法が特定の担当者にのみ蓄積されるパターンです。変化が速い領域ほど、この種の属人化が発生しやすくなります。

属人化を放置した場合の4つのリスク

業務停止リスク

担当者の休職・退職・異動によって、業務が完全に止まるリスクです。前述のSMB調査でも、属人化のリスクとして「従業員の負担増加」「業務効率の低下」が上位に挙がっており、担当者が1名しかいない業務ほど、不在時の影響は深刻になります。

品質のばらつき

担当者ごとに判断基準が異なるため、成果物の品質が安定しません。顧客対応の場面では、担当者によって回答が異なるという事態にもつながります。

業務改善の停滞

属人化した業務はプロセスが可視化されていないため、改善の対象にすらなりません。非効率なやり方が長期間放置される原因になります。

組織の成長阻害

ナレッジが特定の個人に閉じることで、組織としての学習が進みません。新人の育成に時間がかかり、業務のスケールが難しくなります。2025年版の中小企業白書(帝国データバンク「令和6年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」に基づく)でも、属人化防止に取り組んでいる事業者とそうでない事業者の間に、付加価値額の増加率に差が出ていることが示されています。

属人化解消の前提:暗黙知を3つに分類する

属人化を解消するには、まず「何が属人化しているのか」を正しく分類する必要があります。属人化の本質は暗黙知(言語化されていない知識)の蓄積にあり、暗黙知は性質によって3つに分けられます。

手順型の暗黙知

「どうやるか」に関する知識です。業務の手順、操作方法、作業の順序やコツなどが該当します。たとえば「この設備の調整は、まず○○を確認してから△△をいじる」といった実務的なノウハウです。このタイプは比較的言語化しやすく、マニュアルや動画で形式知に変換できます。

判断型の暗黙知

「どう判断するか」に関する知識です。状況に応じた意思決定の基準、例外対応のルール、経験に基づく勘所などが該当します。「この数値がこのくらいなら問題ないが、この条件が重なったら要注意」といった判断基準は、本人でさえ明確に説明できないことが多いのが特徴です。

価値観型の暗黙知

「なぜそうするか」に関する知識です。経営理念、行動原則、顧客への向き合い方、品質に対する姿勢など、組織の文化や個人の価値観に根ざした暗黙知です。創業者の経営哲学や、ベテランの仕事観がこれにあたります。最も言語化が難しく、かつ最も組織にとって重要な知識です。

属人化の対策は、この3つの暗黙知それぞれに合った方法で進める必要があります。手順型にはマニュアルが有効ですが、判断型や価値観型にはそれだけでは不十分です。後述するAIの活用が特に効果を発揮するのは、判断型と価値観型の暗黙知の継承です。なお、3分類ごとのAI継承の適性と具体的な進め方は、暗黙知をAIで継承する方法で詳しく解説しています。

属人化を解消する5つの方法

方法1:業務の可視化と棚卸し

最初のステップは、「誰が何をどのように行っているか」を見える化することです。業務の一覧を洗い出し、各業務の「重要度」と「属人化の度合い」を2軸でマッピングします。重要度が高く、属人化の度合いも高い業務から優先的に対策します。

方法2:マニュアル・手順書の整備

手順型の暗黙知に対する最も基本的な対策です。ただし、分厚いマニュアルを作っても読まれません。ポイントは「検索できる」形で整備することです。社内Wikiやナレッジベースツールを活用し、必要なときに必要な情報にすぐアクセスできる状態を作ります。動画マニュアルも、文字だけでは伝わりにくい操作手順の共有に有効です。

方法3:ナレッジ共有の仕組みづくり

マニュアルの整備は「一度きりの作業」になりがちです。継続的にナレッジを蓄積・更新するには、日常業務の中で自然に知識が共有される仕組みが必要です。具体的には、業務日報の共有、案件ごとの振り返り記録、対応履歴のデータベース化などが挙げられます。重要なのは、ナレッジ共有そのものを業務フローに組み込むことです。

方法4:複数担当者制(クロストレーニング)

一つの業務を複数の担当者が遂行できる状態を作ります。ジョブローテーションやペア作業の導入により、知識やスキルが一人に集中することを防ぎます。短期的には生産性が下がるように見えますが、中長期的には業務の安定性と組織の柔軟性が大幅に向上します。

方法5:AIを活用した暗黙知のデジタル化

ここまでの方法1〜4は従来型の対策であり、多くの企業がすでに取り組んでいるものの、十分に機能していないケースが少なくありません。その主な原因は、マニュアルの更新が追いつかない、ナレッジ共有に割く時間がない、という現場のリソース不足です。

AIを活用すると、このボトルネックを根本から変えられます。次のセクションで、具体的な活用方法を解説します。

AIで属人化を解消する3つのアプローチ

AIによる属人化解消は、先に分類した暗黙知の3タイプに対応させることで、効果的に進められます。

アプローチ1:社内FAQチャットボットで手順型の暗黙知を検索可能にする

社内文書、マニュアル、過去の対応履歴をAIに読み込ませ、社員がチャット形式で質問できる仕組みを構築します。RAG(Retrieval-Augmented Generation)と呼ばれる技術を用いると、AIが社内データを検索し、出典付きで回答を生成します。

「この申請はどう処理すればいい?」「○○のトラブルは過去にどう対応した?」といった質問に、AIがベテラン社員の代わりに答えることで、問い合わせの集中を分散し、担当者の負担を軽減できます。

このアプローチが最も効果を発揮するのは、手順型の暗黙知が散在しているケースです。既存のドキュメントが多い組織ほど、すぐに効果が見込めます。

アプローチ2:判断基準のAI再現でベテランのノウハウを継承する

ベテラン社員の判断プロセスをヒアリング・記録し、AIが同様の判断基準で回答できるように構築する方法です。判断型の暗黙知の継承に有効です。

たとえば、営業担当が見積もりの妥当性を判断する際の基準、品質管理担当がNG判定を下す際のチェックポイントなど、経験則に基づく判断をAIに学習させます。AIの回答がベテランの判断と一致するかどうかを検証しながら精度を高めていく運用が重要です。

このアプローチの課題は、判断基準の抽出に時間がかかることです。ベテランへのインタビューや過去の判断事例の収集・整理が必要であり、技術継承の方法としては最も手間がかかる一方、効果も大きいものです。業種別の技術継承の進め方は技術継承にAIを活用する方法で解説しています。

アプローチ3:価値観・理念を再現する対話AIで組織文化を継承する

最も難易度が高いのが、価値観型の暗黙知の継承です。創業者の経営哲学、組織の行動規範、顧客対応の姿勢といった「その組織らしさ」を定義する知識は、マニュアルにも判断基準にもなりにくいものです。

この領域では、特定の人物の発言・思想・価値観を学習した対話AI(パーソナルAI)が一つの解決策になりつつあります。たとえば、経営者の過去の発言や著作、社内メッセージなどをAIに学習させ、社員が経営者の考え方を対話形式で参照できる仕組みです。

新入社員が「この場面で創業者ならどう判断するだろう」と対話AIに問いかけ、経営理念に基づいた回答を得る。このような活用は、理念の浸透やオンボーディングにおいて従来の方法では実現できなかった可能性を持っています。

ただし、このアプローチには注意点もあります。AIの回答は元になるデータの品質に依存するため、学習させる情報の選定と精度検証が欠かせません。また、AIの回答をそのまま判断の根拠とするのではなく、あくまで参考情報として活用する運用ルールが必要です。

属人化解消を進めるステップ

属人化の解消は一度きりの取り組みではなく、継続的な改善プロセスです。以下のステップで段階的に進めます。

ステップ1:現状の棚卸し。 全業務を一覧化し、「担当者が1人しかいない業務」を特定します。影響度(その業務が止まったときの損害)と属人度(代替可能な人がいるか)の2軸で優先順位をつけます。

ステップ2:暗黙知の分類。 前述の3分類(手順型・判断型・価値観型)に当てはめ、それぞれに適した対策を選定します。すべてを一度に対応する必要はありません。

ステップ3:小さく始める。 まずは影響度が高く、暗黙知の言語化が比較的容易な業務から着手します。手順型の暗黙知であれば、FAQの整備やマニュアルの作成から始められます。AI導入を検討する場合も、まずは限定的な領域でのPoC(概念実証)から入るのが現実的です。

ステップ4:仕組みとして定着させる。 作成したマニュアルやFAQが使われ続けるよう、日常業務の中に組み込みます。四半期ごとにナレッジの棚卸しを行い、新たな属人化が発生していないか確認する仕組みを設けます。

ステップ5:効果を測定する。 属人化解消の効果は「担当者不在時の業務継続率」「問い合わせ件数の変化」「新人の独り立ちまでの期間」などの指標で測定できます。定量的な成果を示すことで、取り組みへの組織的な理解と協力を得やすくなります。

まとめ

属人化は、個人の問題ではなく組織の構造的な課題です。人材不足、マニュアル整備の不足、評価制度、業務の専門性など、複数の原因が絡み合って発生します。

解消にあたっては、まず「何が属人化しているのか」を正しく把握し、暗黙知のタイプ(手順型・判断型・価値観型)に応じた対策を選ぶことが重要です。従来のマニュアル整備やクロストレーニングに加え、AIを活用した暗黙知のデジタル化は、リソース不足という根本的なボトルネックを解消する手段として有効です。

属人化の防止は一度の施策で完了するものではありません。ナレッジを蓄積・更新し続ける仕組みを業務フローに組み込み、継続的に改善していくことが、「あの人がいなくても回る組織」を作る鍵です。

テラバースでは、社内ナレッジの検索AIや、経営者の理念を継承する対話AIなど、暗黙知のタイプに応じた生成AIソリューション開発を提供しています。属人化の解消にAI活用を検討されている方は、お気軽にお問い合わせください。